Trusted Web (部署の名前)
僕がいまいる部署の名前は Trusted Web といいます。
Trusted Web ってなんぞや、ってこれ別にうちの会社がひねり出した独自用語でもなんでもなくて、元は「Trusted Web 推進協議会」が考えているネットワークの「こういう能力が欲しいよね」というものです。
リンク先は長いですが、とっても乱暴に要約すると、信頼できる相手と信頼できるやりとりをしたいな、ということです。うちのチームも、これにまつわる活動をしています。
Trusted Web って名称ですが、分解すると、Trusted と Web になります。Web という言葉は、普段ブラウザで眺めてる「インターネット」(SNS とかショッピングサイト) っていう意味じゃないって点が要注意ですかね。大手 SNS とかショッピングサイトにみんながアクセスして、そこを経由して会話したり売買したりするのは、Web というよりスター型のネットワークになります。中心に大手サイトがあって、みんなその周りに集まってるので、まるで星みたいに見える様子は、よくスター型と呼ばれます。
大手サイトに頼りきりで生活していると、そのサイトの都合にふりまわされます。先日は G suite 無料化の廃止で、いろんなひとが悲鳴を上げていましたね。
Trusted Web で言うところの Web はこれではなくて、いろんな相手、いろんな人、いろんな企業、いろんなナニモノカがメッシュ状に繋がりあってる状況を言っています。
自分たちでやりとりできるなら、大手サイトに頼らなくて済むなら、これはひとつ安心材料になりますね。四半世紀前に ティム・バーナーズ=リー が作った World Wide Web の仕組みは、もともとこのようなメッシュを指していました。Trusted Web が目指す社会は原点回帰と言えるかもしれませんね。
いっぽう Trusted という言葉は、とっっっても抽象的な言葉です。この相手なら安心してやりとりできる、この方法なら安心してやりとりできる、といった安心がそこにはあります。というか、安心できるようにナニカを作ろう、と言ったほうがいいかな。でも、いざ実装するとなると頭を抱えてしまいます。なにがどうだったら自分は安心できるんだろう?
冒頭に出した Trusted Web 推進協議会の方々が考えておられたのは、やりとりの実績とかかなと思います。未納とか不払いとかやったことないよ、というのは確認しやすくていいんですが、まぁこれは最低限っていうところかなと思います。じゃああとは?
犯罪歴?そんなごりごりなプライバシーの固まり、見ていいハズがありません。見ていいのは警察官とか空港のイミグレみたいな、職務上必要だから権限を持ってるひとだけです。
行動歴?これもけっこうなプライバシーですよね。生々しい記録をそのまま他人に見せるのは、ストーカーさんいらっしゃいと言ってるようなものです。
破産歴? やりとりの実績から推測できちゃいそうですし、今時の金融機関なら調査してるような事項です。お金のやりとりが絡むなら必要と割り切るんでしょうし、金銭が絡まないならできれば知りたくないし知られたくないですよね。
どんな人か? 友人関係や好きな遊び場、普段の言動などから推測できるわけですが、行動歴というよりだいぶ丸めた感じで、悪くなさそうです。
気が合う人達/考えかたが合う人達/価値観が合う人達が可視化されると、そのなかでやりとりする分には、だいぶ安心感が増します。これは良いですね。EM 菌や謎水のようなトラブルメーカーも可視化されるでしょう。うん。これも良いです。
しかしこれは、感じかた考えかたになにか違いがある人達が可視化されるということにもなりそうです。社会の分断を促しそうなんですよね。トランプ政権末期みたいな過激なひとたちから見ると、攻撃対象が可視化されるということになりそうです。それでなくても、よそのクラスタに親近感を持ちづらいのは自然なことですし。また、似非科学にはまりやすい方々は反論されると仲間うちで固まりたがる (出展不明) ので、反ワクみたいな活動を信じて参加してしまった方々が結束してその思いを深めてしまうことにもなりそう。これもなかなか怖い。
価値観が合うかどうか見えるようになると怖いことになりそうだけど、価値観が合うかどうか見えない相手とやりとりを始めるのって、そもそも怖いよね。なにこれどうすりゃいいの。
というわけで、Trusted Web について検討する仕事をやってます。そして Trusted Web ってどんなもんなのか、さっぱり分かりません。うーん困ったもんだ。